ウォーリアー

Warrior(2011 ギャビン・オコナー)

http://www.imdb.com/title/tt1291584/

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500万ドルを賭けて兄弟がリングで戦います。ハーディの醸し出す孤独感と僧帽筋!

父親(ニック・ノルティ)はアル中でなければとても優秀なレスリングのトレーナーだったのだけれど、飲酒とDVで妻と息子の1人(トム・ハーディ)に逃げられます。もう1人の息子(ジョエル・エドガートン)とは暫く一緒に暮らしましたが、その息子にも捨てられます(これは、息子の子供と何かあったように臭わせますが作中では説明はされません)

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父親は改心して教会に通い、禁酒をしています(でもまだ1000日なんだよな)

そんな彼の元に妻と逃げた方の弟のトミーが酒を持って訪ねてきますが、今更の禁酒の話で相変わらずの自己中ぷりに怒りを隠せず、母親の最期の話をしますがやはり噛み合いません。

一方の兄ブレンダン(ジョエル・エドガートン)は、高校の教師をしていますが、娘の1人が心臓病を患っていて高校教師の給料では家のローンも払えない状況に陥ってしまい、昔取った杵柄でストリートファイトすれすれのような格闘技のリングに上がって小銭を稼いでいたのがバレて停職になってしまいます。

トミーは街のジムにふらりと現れて入会したついでに、有名な格闘家のマッドドッグをKOしてしまいます。それでマッドドッグのトレーナーでジムのオーナーのコルト(マキシミリアーノ・ヘルナンデス=シットウェル)に気に入られ、新しく開催されるスパルタへのエントリーを獲得します。

ブレンダンは停職になってしまったので、本格的に拳で食べていくしかないと思ったのか、かつての知り合いらしいフランク(フランク・グリロ)のジムを訪ねてトレーニングを依頼します。

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2人とも500万ドルを賭けてのトレーニングをはじめるのですが、トミーがトレーナーを依頼したのはかつてその元を去った父親でした。

コルトはトミーの父親の家を訪ねて、トミーの所在を確認します。そこで父親はトミーの今の状況を知ることにもなります。

父親は急にやる気を出して自分の家にトミーを泊まらせ、食事の管理からはじめます。

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このあたりの描写とか演出どうにかならなかったのかと…80年代のミュージックビデオかと…。

ブレンダンはフランクの秘蔵っ子が怪我をしてリタイアした後釜に滑り込んで出場にこぎ着けます。

トミーが海兵隊に所属していたときにある隊の装甲車が水没しそうになったときに装甲を剥がして(ドアを素手で開けて)助けたことがあったというのを説明するために突然戦場のシーンが挟まれるとか、ブレンダンを停職に追いやることになった高校の職員も生徒もみんな熱狂的にブレンダンを応援するようになるとか、すべてにおいてなんだか演出が陳腐なんだけどね。

二人がスパルタに参加するあたりから、涙腺が崩壊してしまいました。


結果を知りたくない人はここから先は鑑賞後に!


とにかく、トミーがかわいそうすぎるんですよ。ブレンダンはそうはいっても持つべきものは持っている(愛する妻と二人の娘)んですけど、トミーは本当になにもないんですよね。

おまけにブレンダンはフランク提唱のクラシックを聴きながらトレーニングの延長で入場の時にもバッハの歓喜の歌とか流しちゃって入ってくるし、セコンドとしてもすごく優秀。

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フランク・グリロはこの作品で注目されてこの後いろいろ出演するようになったようですけど(とはいえ遅咲きよね)すごくいいと思いましたね。なんか結構計算高くて冷徹なところがあるんだけど、人情味もあってすごく心の広い感じがする。

なのに、トミーは入場曲もないし、父親をセコンドとしては必要としてなくて、触らせることさえしないんですよ。最期の方は父親もいなくてフードをかぶって暗闇から出てくるところなんてほんとにぞっとするくらいの孤独感なんですよ。

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セコンドぽいことをしようとする父親にさわんな!っていったりするのです。

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父親としてではなく、コーチとして優秀だからなんだよね…。

トミーは戦場の英雄としてすっかり有名になっていて、海兵隊の観客なんかが海兵隊賛歌を歌い出したりとかまでしちゃうんだけど、それでもすごく孤独なんですよね。事情が事情だけに、もっと孤独になるというか…。

多分、この孤独感を出すのがすごくうますぎて(ハーディが)涙腺が崩壊したんだと思います。

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トミーは戦死した友人の面倒をみようとしていたのだけれど、そもそもそれが自軍の誤爆によるもので、それで脱走してきたのです。脱走の途中に沈む装甲車を助けたから、勲章もなにもあったもんじゃないですよね。そういうちょっとした風刺?も含まれていたりするんだけど盛り込みすぎか…。脱走兵なので試合が終われば収監されます。

スパルタの前夜に兄弟は再会するのだけど、兄が譲歩しているようだけど弟はまったく受け入れないんですよね、これは性格のせいだけなんだとは思うんだけど、この再会でのやりとりが実際の試合にも現れているような気もします。

初日の快勝の後の夜のスロットマシーンの前での父親との対峙もすごく陳腐なんだけど、これは必要なシーンではある。

更に、押してくるのは、父親がずっと最初から聞いてる「白鯨」のテープ。これが最後の最後にだめ押ししてきます。「白鯨」である意味ってあるのかな?とか思ったけど、よく分らなかった。白鯨未読なので(大体のことは知っているけどちゃんと読んだことないレベル)余計かも。こちらの感想文がたいへんわかりやすい。

どんな風に父親が思っていても、結局、それは父親のエゴでしかなくて、トミーにとっては孤独を癒やすものにならないんだよね…。かわいそうすぎる。書いてて泣けてきた。

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このときの諦観みたいなハーディの表情が素晴らしい。無表情なのに泣かす。

決勝は兄弟対決です

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親父どうした?とか訊いてしまう兄に対してなにも返さない弟。

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肩の関節キメられてもタップしないで、結局肩を脱臼しちゃうんだよね、それでも闘うのをやめない、痛くて悔しくて泣いてるのにやめないんだよね。もうね、この人(ハーディ)うますぎた。ブレンダンもコーバとのの試合では「折っちゃえ!」てフランクに言われてそれはできないってなってるのに、決勝だからていうのもあるし、弟だから、タップしてくるだろうっていう甘く見てるところもあって、脱臼させたことに動揺してたりもするんだよね(ここはエドガートンもうまかった)

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最後は倒してやらないとこれは終わらないとフランクも言ってたし、ブレンダンも悟ったのでキックで倒すのだけど、優勝のセレモニー的なものもすっ飛ばして二人でケージを出るんだよ。ブレンダンはお前のことを愛しているよ、もういいんだよって言うんだけど、多分それでも殻にこもっているトミーはまだ解放されていないような感じがしたんだよな…もうね、さいごの雨に濡れた犬みたいになってるハーディが愛おしすぎた。

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終わり方でいいなと思ったのは、決して二人の兄弟は父親と和解しないところ。これは全体的に陳腐だなーと思っていたので、ここで父親とも和解したら陳腐すぎて台無しだなーと思ったので。

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置き去りにされる父親。そうはいっても二人の息子をリングに送り出したんだから、どんだけ底力はあるのかっていうね。


ブレンダンの奥さんのテスはどこかで見たことがあると思ったら、「ワンスアポンアタイム」の人だった。脚きれいだけど、出し過ぎじゃね笑。

シットウェルとクロスボーンが出ていたのでMCUスキーとしての血も滾りました。

あまりに泣きすぎるのでおかしいかと思ったら、何度見ても泣くって人が海外にもいた笑。同士よ!

そういえば、歓喜の歌は気になったんだけど、The Nationalは3度目くらいに見ててあー、ここでかかってたんだーくらいの印象でした。やっぱり観てる時に音楽聴いてないんだなー、私は。特に筋にすごく関わってると気になるとは思うけど。まあ、この曲は監督もこの曲が先にあったって言ってるから、意味深いんだとは思うけれど。


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