Youth

Youth

グランドフィナーレ(2015年 Paolo Sorrentino)(ギャガ 2016年4月16日)

http://www.imdb.com/title/tt3312830/

若さとはなんなのか、老いとはなんなのか。グランドフィナーレは言い過ぎじゃないかな…邦題よ。若さのいい感じの言い回しを見つけて邦題にしてほしかったな…。

とにかく、シュールすぎてすごく大好物なんだけど、ざっと感想などをググってみたけどそこに触れている人がいなくて、感動作!みたいなのばっかりなんだけど、俺の見方がおかしいのか…。


美しいスイスのリゾートホテル。毎晩光って回る舞台の上で繰り広げられる歌やパントマイム。古い友人同士の老いた男性が二人。

一人は有名な曲「シンプルソング」を作曲したフレッド。そのフレッドの元に女王陛下の使いの人がやってきて、女王の前でオーケストラの指揮をしてほしいと頼みます。フレッドはむげに断り、それを見ていたハリウッド俳優のジミーはニヤリとします。

もう一人は映画監督のミック。若いチームを率いて自分の遺言となる作品を撮ろうとしている。ラストシーンがまだ決まらない。

美しいスイスの風景、リゾートホテルで逗留する老いたお金持ちっぽい人々、ベルとともにやってくる従業員たち。なんとなく気だるく。

フレッドをマッサージする若い女性。歯列矯正。オフの日はダンスのゲーム。その姿が、何度もなんどもリフレインする。

旅行に行ったはずのフレッドの娘が、ホテルにやってくる、夫に離婚を告げられたからだという。夫は、ミックの息子。

仲良し

かつてこの人がへなちょこでなかったところを見たことなかった…。シュールな役どころなんだけどね…。すごく二枚目に撮られてる。

いちいち映像が絵画のように美しかったり、ミュージックビデオのようなスローモーションだったり、本当にミュージックビデオだったり。牛が指揮に従ったり、鳩時計が音楽を奏でたり。超絶長ゼリフだったり、あの人があの人に扮したり。あの神の手の人があんなことしたりあのカット長くてびっくりしたよ。その前の「左利き」宣言は声が出そうなほど笑った。ミスユニバースのど迫力バディ。あと、妻。妻、ラストシーンずるいだろ。あと、この人↓

映像としてものすごく好みだったんですよ。ツボを突かれた。パントマイマーのシャボン玉とか。たまらない。妻は怖かったけど。

おそらく、ストーリーだけを追っていると感動作なのかもしれないけど、本当にここで感動していいのだろうか…なにかのサーカズムとかが隠れていないだろうか…。これは何のオマージュなんだ!などと考えてしまいましてね。

Sun Kil Moonの弾き語りとか見れちゃっていいんですよね。音楽がね。牛のベルもね。

パオロ ソレンティーノて現代のフェリーニって言われている人なんですね…何も知らずに見てしまったけど、その感じはつかめてたのでよかったです。


2016/04/16 バルト9 シアター5 G列(ちょうどいい感じだった。スクリーンも満足サイズ)

Spotlight

Spotlight

スポットライト 世紀のスクープ(2015 Tom McCarthy)(ロングライド 2016年4月15日)

http://www.imdb.com/title/tt1895587/

アカデミー賞作品賞と脚本賞を獲ったことで、日本でも公開されたし、大きいスクリーンにかかったのは良かったと思います。なかなか日本人になじみのない題材ですしね。

キリスト教の知識とか必要かな?と思ったけどそうでもなかったです。

むしろ、新聞というものが日本とはちょっと違うのかなーという気もしました。いや、日本もそうなんだろうけど(そうであって欲しい)


ボストンの新聞社ボストングローブの局長が交代になります、新しい局長マーティ バロン(リーヴ シュライバー)の指示のもとで、カトリック教会の神父たちによる子供達への虐待の取材をすることになる。担当するのは、一つの題材を深く掘り下げた記事を書く部署であるスポットライトのチーム。チーフのウォルター(マイケル キートン)をはじめとするチームが取材を重ねていくと驚くべき事実にあたった…。

ただただ、粛々と取材を進める姿を描き続けるんですね。たまにマイク(マーク ラファロ)が怒っているけど。それぞれの立場で、それぞれのできることを粛々と進めるんです。粛々という言葉がぴったりくる。粛々すぎてほとんど山がない。あるとしたら、マイクが怒るところとか。

怒りすぎると緑になっちゃうからね(関係ない)

取材の合間にチームや編集のチーフであるベン(ジョン スラッテリー)と、編集方針とかについて話し合ったりするところはあるんだけど、とにかく取材している姿を延々とやる。困難があっても、なんとか越えていく、コネとか熱心さとかそういうので。

なんていうか、崇高なものを見たな…っていう気がした。実際に悪いことをしているのでは?という人も実はこんなところで善い人であった…というような側面があってなんともいえない気分にさせられたりします。

あと、法律とかわかんなくて置いてかれるところもあった…ははは。

リーヴ シュライバーがちょっといわくつきの役どころだったのだけど、思っていたよりハマってたなあ(そういえばこの間チェスプレイヤーにもなってたか)

特にエンドロール前に、実際に見つかったカトリック教会の腐敗の事実を突きつけるテロップが出た時は、こみ上げてくるものがあったなあ…。

このアカデミー賞受賞は、なんていうか、映画に対してもあるだろうけど、ボストングローブに対してでもあるんだろうなあ…という気がした。

たいへん地味な作品なので、じっくり見るといいと思います。


2016/04/15 TOHOシネマズ日本橋 スクリーン7 J列

ボーダーライン

Sicario(2015 Denis Villeneuve)(KADOKAWA 2016年4月9日)

http://www.imdb.com/title/tt3397884/

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最初に作品を知った時はシカリオだったので、そう覚えていたらいつの間にかボーダーラインとか邦題つけられているし、すごく気に入っていたポスターのビジュアルも使われていないし、もうなんだかなー…このグローバルの時代に…と思いました(ムビチケとかはこれだったのかな?)

上映開始10秒で、シカリオとは…みたいな説明が入るんですけどね…。なんで邦題つけた…。

この監督ドゥニ ヴィルヌーブの作品は、プリズナーズも複製された男もどっちもかなり好きだったので(あの不穏な感じが)楽しみにしていました。前情報はほとんど入れずに観ました。トレイラー観たくらい。


正義感に溢れた女性FBI捜査官のケイト メイサーが参加したメキシコの麻薬カルテルを撲滅するための作戦と、その作戦にリクルートされる理由となった捜査について描かれています。

ケイト(エミリー ブラント)は3年目のFBI捜査官、アリゾナにある組織のアジトと思われる場所に誘拐事件の捜査でやってきます。そこで遭遇したのは、人の仕業とは思われない光景、さらに、捜査官が犠牲になる爆破まで起きます。

その捜査をきっかけにか、政府機関がFBIにやってきて、ケイトを特殊部隊にリクルートしようとします。というか、志願させようとするんです(ずるいね)ケイトは相棒のレジー(ダニエル カルーヤ)とともに呼び出されていましたが、捜査チームの胡散臭いリクルーター、マット(ジョシュ ブローリン)はレジーは選ばず、ケイトだけをリクルートします。

ケイトは、今回の誘拐事件の発端である、麻薬カルテルの大ボスを潰すことができるということで参加を決めるのですが…。全体の作戦を説明されないまま、専用機で連れて行かれ、作戦に参加することになります。その時に専用機であったアレハンドロという男(ベニシオ デル トロ)は、無口で暗い目をしていて、自己紹介さえしようとしません。

とにかく全体に流れる男臭さ、エミリー ブラントが主演なんですが、実質の主演はベニシオ デルトロと思われます。

胡散臭いマットも、作戦に関しては、さらに胡散臭くてズル賢いところもありながら、一旦作戦に入ってしまえば才能を感じざるを得ません。いいよね、ジョシュ ブローリンのこの二面性のある感じ。

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ところどころに挟み込まれるメキシコの警官シヴィリオ(マクシミリアン ヘルナンデス)の家庭、ジリジリと暑い感じと、乾燥して埃っぽい感じ。光と影。

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全体を通して乾燥して暑く埃っぽい感じがあります。空撮も多く、作戦中には上空からの支援もあります。俯瞰で見せる画面や、カメラは動かず、被写体が横断したりするシーンがすごく多い。すごく好きだなー、広がりのある映像とか。撮影監督はロジャー ディーキンス(Roger Deakins)メキシコのフアレスでの容赦ない残虐な描写、特に市街地での処刑後のシーンとか、高速道路上での銃撃戦。全体的に暑苦しいほどに残虐な描写が多く、血も結構出てエグい。前半の緊張感は半端なく、なんども銃声にびっくりしてしまった。終盤の銃声もびっくりしたけど、あのシーンはちょっと平和すぎた。

レジーから、ブラどうにかしろよと言われたり、1週間同じグレーTシャツを着ていることを咎められたり、ケイトは女性であることを感じさせないようにしている節もあります。女性であることがハンデであることをほのめかしながらも、 だからといって心が折れそうになるものの、決して諦めることをしないまっすぐなケイトと、さらにその上をいくアレハンドロの闘いでもあるのです。

ケイトが中盤で、どんどん自分に自信がなくなっていく場面で、レジーの旧友の警官のテッド(ジョン バーンサル 出てきた時に、アラ?って思っちゃったけど)に嵌められそうになる(ダブルミーニグ)んですがその場面であっても、必要以上にケイトが女性であることについて作品の側から「女だから…」というムードは感じられません。無力感としては女性じゃなくても感じるだろうと思う。

とにかくですね、ベニシオがよいですよ。暗く影があって、ゴーストとか呼ばれてしまう。復讐に静かに燃える男、本当に容赦がない。無口で余計なことは喋らない…んだけど、ちょっとだけ優しさはある。優しさはあるけど、甘くはない。

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エミリー ブラントも、すごくいいです。この人いいなー、好きだなー。男性の中に混じって実践でガンガンいくっていうのがよく似合う。別に体型がいかついわけでもなんでもないんだけど、むしろ華奢なんだけど、でも強靭さを感じさせるし、意志の強さも感じさせる。

インディアン クリークっていうタバコが度々出てくるんですけど、どうやら実在はしないぽいんですよね。このタバコが禁煙できなくなったケイトが吸うシーンや、シヴィリオの部屋にカートンで出てきたりする。

全体的に低くてブンブンうなるような音楽で、これもすごく好きでした。音楽で煽ることはしないけど、緊張感を増幅させるような、引きの画の時によく合ってた。プリズナーズでも音楽をやっていたアイスランド出身の人、Jóhann Jóhannssonです。博士と彼女のセオリーの音楽もやってた人みたい。

字幕翻訳は松浦美奈さんでした。安定。


2016/04/09 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン10 I列
2016/04/16 新宿ピカデリー スクリーン1 L列(ピカデリーのスクリーン1はこの列あたりがちょうどいい感じです←自分メモ)

それにしても、MCUに関係ある人が二人もたくさん出ててニヨニヨしてしまったよね。

ルーム

RoomLenny Abrahamson 2015)(ギャガ 2016年4月8日)

http://www.imdb.com/title/tt3170832/

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正直なところ、もっと社会派なタッチかと思っていたので、あまり乗り切れなかったし、感情移入できる人が見つからなかったけど、お腹が空いてて見てたからかもしれない…え…。

大きいスクリーンで観たんですけど、もしかしたら、小さめのスクリーンで観たらいいのかな…という気がしました。


ジャック(ジェイコブ トレンブレイ)とママが住んでいるのは、窓といえば天窓しかなく、ドアは暗証番号で鍵がかかっている一部屋。小さいキッチン、洗面シンク、バスタブ、クローゼット(ジャックのベッドでもある)、ベッド、テーブル。ジャックはこの部屋で生まれた。外の世界を知らない。外があることさえ知らない。テレビの中は偽物、本物はママ(ブリー ラーソン)と自分だけ。

不便だし、清潔とはいえない部屋の中、なぜ二人は外に出られないのか、それはオールドニック(本名は知らない ショーン ブリッジャーズ)に監禁されているからだ。オールドニックが「部屋」に来るときは、ジャックはクローゼットに隠れる。ママとオールドニックはジャックの見えないところで何かをしている。

ジャックは5歳になる。ママはケーキを焼いてくれる、でも、ロウソクはない。

フリッツル事件をベースにした(って、ギガジンに書いてあった)原作を映画化したものらしいけど、事件性とか社会性とかよりも、親子の愛情だとかそういうものにフォーカスをしぼって書かれている。

二人が外に出てからの感じはちょっとゴーン ガールを思い出しながら見ていた。だから余計にヌルいと思ってしまったのかもしれない。

そう、全体的にぬるかった。ぬるいというか、本当に淡々としている。

音楽もほとんど使われていなくて、生活音とか、呼吸とか、そんな音しかしない。

この映画が好きで、泣きましたっていう人がほとんどなので、これは個人的な感情の問題かと思うので、作品の良し悪しと関係ないのかも。グッとはきたけど、涙が出るほど胸が詰まって…みたいなことはなかった。

冒頭にも書いたけれども、本当に誰にも感情移入できなくて、特にジョイ(ママ)の気持ちになれないのは私に思いやりとかそういうのが足りないからだとは思うんですけど。

映像はね、よかったんですよ。あと、ジャック役のジェイコブ君は本当に可愛いし、自然な演技で大変よろしかったし、ブリーも顔を洗わずに体当たり演技ということで、悪くなかったとは思うんですよ。ばぁば(ナンシー:ジョーン アレン)の感情の揺れ動きとかもよかったとは思うんです。

ジャックが階段を上り下りできないとか、いろんな当たり前と思うことがわからないとかの描写とかもすごくよかったと思う。モノローグで世界が広すぎて時間が足りないんだっていうところは、ちょっとグッときた。「部屋」を再訪したときに、「部屋」が縮んだ?って訊くところとか。

唯一、ナンシーの新しい夫のレオには同調できたのでよかったです。この人もいなかったら結構殺伐とした気持ちで観終わっていたと思う。

ただ、この映画でよかったと思うのは、誰がどうだっていう一人一人に対する批判とか、誰かにものすごく偏った描き方はしていないところかな。それぞれがそれぞれの感情を持っている、それでいい、っていうか。父親(ウィリアム H. メイシー)がフェイドアウトして二度と戻ってこないところも。彼の持つ複雑な感情とかも、言葉に出すわけじゃなく態度だけでわからせるところとか。

同じ疑問を持ったという意味でトークショーの司会の人も相当意地が悪いけど、悪い意味でちょっとだけ感情移入してしまった。無力感でそんなこと無理だというのもわかっているけれども。それがジョイを追い詰めていることも分かっているけれど。

こうして書いてきてみると、もっと問題視したような描き方ができなかったのかな…というところに収斂するような気がしてきた。もちろん、親子の感情みたいなのだけしか書かれていないかっていうとそうでもないんだけど、なんとなくそういう感想を目にすることが多いような気がして。そういうことが伝わってないのかなあ…とか。

ざっと感想を書いているブログを漁ってみたら、割とわかってらっしゃる人がいてよかった。

結局この作品も、親子の感動物語みたいな感じで売り出している宣伝が間違っているというか、ミスリードさせてるんじゃないかな…というところに落ち着いた。感動作というよりは、問題提起しているのになあ…。

子供が出来るまでの2年間はどうやって生き延びていられたんだろう…。

字幕は稲田嵯裕里さん、ジィジとかバァバとかどうなんかな…って気はした。確かに単語として短くて都合もいいけど。


2016/04/08 TOHOシネマズ新宿 スクリーン9 TCX J列