キャロル

Carol(2015 Todd Haynes)(ファントム・フィルム 2016年2月11日)

http://www.imdb.com/title/tt2402927/

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私は真ん中のやつが好きですね。日本はアカデミー賞とか、うるさいです。

スーパー16ミリで撮影した印象的な画質。撮影監督はエドワード ラックマン。改めて調べたら乙女っぽい映像はこの人の手によるものが結構あった。(※最近は映像監督について調べるブームが来ているので、これからは積極的に書いていこうと思っているよ)

全体的にうっすら紗がかかっているような、窓越しだったり鏡ごしだったりする映像が、なんとなく、現実というよりは夢物語っぽい。

ピアノ四重奏みたいな、チェロと切ない旋律のピアノがグッとくる気分をさらに盛り上げる音楽の担当はカーター バーウェル(音楽も気になったら書いていくことにしますです。はい、あんまり音楽が頭に残らない性分なので、残るんだったらよっぽど好きか嫌いかなので)

『太陽がいっぱい』の原作者、パトリシア ハイスミスの原作(最初のリリースは偽名での発表だそうです。時代ですかね)の映画化です。原作は読んでいません。多分、読まないんじゃないかな…映画で満足しているし。

しかし、鑑賞中にタバコが吸いたくて仕方なくなるのは困りました笑。いい意味で。いいじゃない、たばこ。もしも昭和な劇場だったら、そこかしこで喫煙開始してると思います。吸わないひとは嫌なんだろうけど、そんなん知るか笑

最初のシーンと後半のシーンがリフレインする形でそこで視点が変わるのもなんとなくいいです。

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デパート勤めのテレーズ(ルーニー マーラ)には、一応カレ氏がいるんですけど、そんなに夢中ではないみたいで、彼の方の空回り。いつもはぐらかされてばっかり。そんなテレーズが売り場で目を奪われたのは大人の女性。品があって金持ちそうで美人。テレーズの視線に気がついていたのかいないのか(多分いた=すごいコマシだと思います)いったん消えて、そしてカウンターにいるテレーズに話しかけてきます。

まあ、その話しかけ方もほんとうになんていうか、コマシなんですよね。4歳の時に何が欲しかったか?なんて聞き方…。うっとりしてしまうね。

そして、多分、わざと(もしかしたら離婚協議のことで頭がいっぱいでほんとうに忘れたのかもだけど)手袋を残していきます。シンデレラか。それを自分で送ってあげるテレーズ。テレーズもこれでもしかしたら繋がり持てるかも…っていう期待はあると思うんです。だって、百貨店だもの本当は個人的にやり取りしたらいかんでしょう?

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それをきっかけとして、キャロル(ケイト ブランシェット)とテレーズはカフェでランチをするんですけど、このときのキャロルの男前な感じがたまらないですね。大人の女ってい感じを精一杯出し切ってテレーズを誘惑しているようにしか見えません。ものすごいタラシ。

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でも、そんな余裕のあるところを見せているけれども、夫のハージ(カイル チャンドラー)(この人なんか好きなんですよねー安定の二枚目みたいな顔で、今時っぽくないところが好き。ちょっと若い頃のアレック ボールドウィン彷彿とさす)との間の子供リンディ(子役は双子だったのか…!)にベタベタで、ハージからは旧友のアビー(サラ ポールソン)との間のことを同性愛であると疑われ(まあ、真実なんですけれども)それをネタに養育権を渡さない=結婚をご破算にしたくないという争いをしているわけで、そんなに男前でも余裕があるわけでもないんですよね。そんな男っぽい(いろんな意味で)キャロルとそれに憧れてしまう(いいところしか見てないしさ)テレーズ。

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テレーズは何事にも自信がなくて引っ込み思案ででも、なんとなく普通とは違う(お嫁さんに憧れるような女の子ではない)(周りには男の子の友達が多い)ところがあって、非凡な感じは最初から少しするんだけど、周りの人たちはそうでもないんだよね…ニューヨークタイムズでバイトしてる男の子だって、まるでテレーズの写真に興味あるようなそぶりだけど、全然そうじゃないし。そもそもまだ50年代は女の子が自立するとかアメリカでもそうそうないことだったんだなあ。

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キャロルの誘いで(高価なカメラまで買ってもらったし)(もう、こういうところがなんか、女の人というより発想が男っぽい)(キャロル的には「むしゃくしゃしてやった、後悔はしていない」みたいな調子だけど)一緒に旅に出る二人。

肉体的に二人が触れ合うのは旅に出てからしばらく時間がかかりますし、その後で転換があるので、「アデル ブルーは熱い色」のような突っ込んだ同性愛描写もなく全体的に乙女っぽいところが好みではあります。

途中で邪魔に入る探偵みたいなひとが最初の接触が調子良すぎてこれはなんかあるな…と思ったけど、すごい装備でちょっとウケた。

しかし、そこであんなに何かの決心を感じさせる小物であった銃が未装填だったとか、キャロルのダメさ(のようなもの)(覚悟の足りなさとか?)を表現していたように思う。全体的になんていうか、ダメな男の写し鏡みたいになっているような気がしてた。

私が迂闊にも落涙したのはテレーズが「ノーなんて言えない、だって、私は何が欲しいのかわかっていないのだもの、何が欲しいかわかっていなければイエスかノーかなんて言えない!」(多分、実際のセリフは違うと思うけど)って逆ギレ?するところです。テレーズはそれまで割とぼんやり生きてきていて、なんとなく写真も好きだけどーだからって仕事にしたいとかでもないしー、いつか私もお嫁に行かないとなのかなー、めんどいなーみたいな人だったと思うんですけど、ここをきっかけにテレーズが自覚して生きるようになっていくと全部のストーリーががらっと趣を変えるんですよね。男前に見えていたキャロルが実はものすごくいろんなことに悩んでいるし、弱みがありまくりだし、というか実際精神的には弱いほうだし、義実家とかめんどくさい、だし…。

だから、ラストで再開した後の展開はきっと全く形が違う方向になっていくんだろうなあ…と思いました。テレーズはすでにニューヨークタイムズで働いているわけですし、キャロルはきっと働いたことなどないお嬢様育ちだろうし(知らんけど)

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ケイト ブランシェットは典型的な美人タイプのルックスですけど、ルーニー マーラはすごく個性的な美人というか、美人なのかどうかよくわからないけど綺麗みたいな人なところが、キャスティングすげーうまいなと思いました。ここでテレーズがいわゆるバービー人形みたいな綺麗さの女の子だったら魅力半減だと思うから。衣装のかんじも特徴的でした。ニューヨークタイムズで働くようになった時のキリッとしたテレーズのファッションも、その前のちょっと野暮ったすぎるくらいのファッションも、キャロルの毛皮とか、タイトスカートとか。

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それから、アビーの出し方が大変的確だったように思います。このひとはもともとキャロルとは仲が良くて、多分この人のほうがもともと同性愛者だったのかな…という気がしました。なんとなく、ファッションとかもキャロルの上っ面な感じよりも男前だし。包容力っていうものがありそう。

テレーズがもう一度キャロルに会うかどうかっていう、1シーン前のパーティーのシーンで、確実に同性愛者っぽい女の子(映像の感じからするに、前にそういうバーで女の人たちがテレーズを見てきた視線に似てた)がテレーズに声をかけてくることでテレーズが決心するようなんだけれども、なんでこのときのこの人のセリフがまるで男を取り合いする女の会話みたいなんだろうな…っていうのが気になった。絶対そういう感じでモーションかけてくるんだろう、この人が…って見てたら、あれ?そうでもないの?って思ったから。

「エデンより彼方に」は未見なんですが、見ようと思います。他のひとの感想やパンフレット読んでたら、見たほうがよさそう…と思った。


2016/2/14 TOHOシネマズ日本橋 F列

パンフレットは表紙が両方観音になっていて美しい写真がたくさんあり、物語を補完してくれるようなインタビューやプロダクションノートがあって良いです。紙も上質なマット紙てかんじ。800円。

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